
日本では、生活行動や食習慣等の変化によって、循環器疾患患者数は年々増加しており、心血管疾患(狭心症や心筋梗塞)で死亡する人は年間20万人を超え、死因の第2位となっている(厚生労働省:令和元年人口動態統計、2020)。
さらに高齢社会が進行し、国民医療費が年々増加する中で、傷病分類別医科診療医療費の循環器系疾患に費やされる金額は、6兆782億円(19.77%)と最も多く、全体の約5分の1を占めている状況だ。さらに65歳以上では循環器系の疾患にかかる医療費は男女共に最も多く、全体の四分の一を占めている (厚生労働省、2017)ことから、循環器疾患の発症(再発を含む)を予防するケアはとても重要となってきている。また、これらの心血管疾患の最終病態とされる心不全は、1950年代から増加し続け、2020年の患者数は全国で約120人、2030年には130万人に達すると推計され、(公益財団法人日本心臓財団)今後の循環器疾患患者の一次・二次・三次予防のための看護支援ニーズはさらに高まっていくと考えられる。
「このような背景から、昨今の医療提供体制は、病院完結型から地域包括ケアシステムへと大きく変わってきています」と話すのは岡田彩子先生。
岡田先生によると、病院から退院した後の患者の生活、特に病気と一緒に生きていく新たな生活様式を構築していくプロセスに、個々に伴走するような支援が大切なのだという。
「患者の数だけ人生があり、療養生活があります。どのような場所で療養していても、看護師として患者の『生きる』を支える、そして病気が進行していくことで、直面する今までの生活様式の変更や難渋することがらについて、どのように折り合いをつけるかを伴に模索していく支援が今後さらに必要になってくると考えています」
医療費の削減や対費用効果の観点からだけではなく、看護師として、疾患とともに生きる生活者としての営みを支えることが必要だと岡田先生は考えているのだ。
「その『生きる』を支える実践をする看護師をどのように育成するかも大切です。個々のさまざまなライフステージの中で、看護専門職としての生涯学習を続けていくこと、それは何かの資格を取得したり、教育機関を修了するということだけではなく、自分自身の人生経験を含め、生きていく中の経験を教材にして、人間を理解していくという学びを深めていくことなのではないかと思います」
最後に岡田先生は、高校生に対してメッセージをくれた。
「これからの学問としての看護や実践としての看護、またその提供方法について、そしてその看護を実践する看護専門職の育成等、新たな知を共に探究し、看護を創造していきませんか?」