日本では、2025年に向けて住まい・医療・介護・予防・生活支援において必要な支援を一体的に提供することを目標とした地域包括ケアシステムの構築が進められている。このシステムは高齢者を対象としていたが、地域共生社会という概念が導入され、地域の多様な人々が世代や分野を超えて丸ごとつながる社会を目指しているのだ。「看護職は保健・医療・福祉のさまざまな場面で、医療的な視点から人々の生活を支えることができる専門職として活動しているため、その役割は大きいのです」という細川満子教授。
なかでも訪問看護師は、地域で生活している小児から高齢者までを対象に、介護予防から看取りまで多様なニーズに対応していることから、地域包括ケア構築の推進役として期待が寄せられている。「訪問看護ステーションに従事する看護職は、約12万人が必要とされていますが、現状は約5万人にとどまっており、まさに新卒看護師の活躍が求められているのです」
「現代の看護において、情報は看護展開を左右する重要な位置づけにあります。本学は総合情報学部が併設されており、情報学という学問を基盤に看護と情報を統合して学ぶことができる環境にあります」と話す細川先生。特に在宅における看護では、療養者に関わる専門職の所属する機関や組織が異なることが多く、個人情報を保護した上でICT機器等を活用し、効率的かつ的確な情報について共有化を図る必要がある。また頻繁に訪問することが難しい遠隔地の療養者への看護、慢性疾患を有する療養者の疾患管理、災害時の支援などでも情報は重要で、ICT機器の導入やネットワーク化が推進されている。
「同時に、ICT等の情報機器から得られる情報だけでなく、患者や療養者の語りから得られる情報もとても貴重です。療養者の語りから思いを引き出し、得られた内容について分析し考察することも、看護職には欠かすことはできません。最新の情報機器とシンプルな語りから得られる情報のバランスを保ちながら、看護に活かしていける人材育成を目指しています」