![AI画像認識モデルを小型惑星探査ローバの制御へ適用](https://tuis-j-people.jp/wp/wp-content/themes/twentytwentyone/images/j-informatics/profesors/pro037_pc.webp)
近年、人工知能(AI)が現代社会に多く普及している。現代のAIはビッグデータからモデルを形成し近似した結果を返すことで、人間の知能を持つような処理が可能になった。例えば、文字からイラストを生成したり、調べものや文章校正等に生成AIを利用できるようになった。
「しかし、このようなAI技術は研究し尽くされた複雑なモデルの処理が施されています。複雑な処理が必要ということは、サイズの大きい超高性能なデスクトップPCなどで処理を行うことが前提であり、例えばスマホのような小型デバイス(エッジデバイス)による処理は想定されていません。小型デバイスで現代のAIを使用すると、処理に莫大な時間がかかったり、処理を行うことが不可能になります」と話すのは、秋山実穂先生。
小型デバイスにおけるAIの利用で私が関わっているのが、小型惑星探査ローバです」と秋山先生。小型惑星探査ローバの設計では、小型ながらもロケットの衝撃に耐えられる機構やバッテリーサイズの小さい低電力消費の設計にする必要がある。しかし惑星探査ではロケットの打ち上げ後に故障してもメンテナンスができないため、動作に信頼性のある機構やシステムの設計にしなければならない。そのため小型惑星探査ローバでは小型デバイスでの動作が必要になるのだという。
「小型惑星探査ローバでは、画像認識などを利用して、周囲の状況を認識し、未知の地面の走行制御を行います。その際にAIを用いた画像認識を行うことで、より探査物の認識精度を向上させることはできないか研究を行いました」走行制御では、画像認識手法は様々ある。そのなかでAIの画像認識を用いた制御をすることで、従来より認識率が上がるのか、小型惑星探査ローバの設計上の小さいコンピュータ(RaspberryPi zeroなど)で処理が可能か、また認識時間は長すぎないか、といったことの調査や、その条件を満たすようなモデルはどのようなモデルかを研究する必要がある。
「小型惑星探査ローバの小さいコンピュータの性能で、探査物の発見や走行制御の認識性能が向上するのか。従来の画像認識方法や様々なAIを用いた画像認識方法の条件と比較し、最適な認識手法を研究しました」と秋山先生は話す。
小型デバイスにおける、AIを用いた画像認識手法は、小型惑星探査ローバのみならず、IoT機器など様々な用途に応用が可能だ。AIを用いた画像認識を利用する機器が小型だと、ウェアラブルコンピューティングで服を着るようにコンピュータを身に纏い使用場所の用途が増えたり、衝突や転倒などが起きず安全な装置として使用することができるなど様々な応用が考えられる。必要となる用途サイズに収まる小型デバイスのスペックが理想の処理時間や認識性能を達成できるか、最適なAIを用いた画像認識手法を様々な手法と比較して研究を行い、理想のAIを用いた画像認識手法を導き出すことができる。
「私の研究室では、このような小型デバイスにおけるAIを用いた画像認識手法を研究しています」