コンピュータと関連技術の発展はめざましく、今後、さらに進歩していくと予想されている。画像処理やコンピュータグラフィックス(CG)も大きく進歩し、未来が大いに期待される分野だ。
「画像処理は、コンピュータの性能の向上とともに発展してきた分野です。基礎的なものから応用的なものまで研究は多岐に渡りますが、基礎的研究の例として物体抽出や物体追跡といったものがあります。身近な例でいうと、カメラの顔認識などがその代表ですが、さまざまなものに応用されており、今後も高精度化、高速度化が進むでしょう」と話すのはメディアデザイン研究室の松下孝太郎教授だ。
医療現場ではCTやMRIの普及と高性能化により医用画像処理による臓器認識、診断支援が行われていたり、衛星画像処理では衛星の高性能化により、人の目で認識できない可視光領域以外の情報も利用した植生分布の解析などが行われたりするなど応用的研究も進む。
「また、人間が視覚的情報を処理することでさまざまな活動をしているのと同じように、ロボットも人工的な眼球から取り込んだ画像を高精度に処理することで、環境認識、姿勢制御が一層スムーズになります。さらに、A(I 人工知能)技術の進展とあわせれば、事前の危険回避、環境予測が可能となり、人間とほとんど変わらない動作が実現できるのではないかと考えられます。特に日本は少子高齢化のため、介護などの面でも、より人間らしいロボットの開発が追求されていくでしょう」と画像処理によるロボットビジョンを挙げる。
今世紀に入り急速に普及した技術といえばCGだろう。映画のCG利用はその代表的な例だが、ほかにも炎や雲などのリアルな動きを流体力学に基づいてシミュレーションする流体シミュレーション、大気中に放出された汚染物質を再現する大気シミュレーションなど多くの研究でも利用されている。
松下先生はCGは教育にも大きく貢献しているという。
「CGは、文字だけでは表現が難しい内容の表現を可能にし、CGの視覚的効果により理解を深めることとあわせ、学習意欲の喚起も期待できるようになりました。特に、ビジュアルプログラミング言語に関する教育・研究に大いに貢献していると言えるでしょう」
ビジュアルプログラミング言語は、CGにより全体が構成されており、プログラミング言語を家庭で利用することや、こどもが操作することを可能とした。すでにScratch(スクラッチ)という学習ソフトが世界的に利用されている。今後ビジュアルプログラミング言語はさらに進化し、3次元プログラミングやCGとAIの融合による半自動プログラミングなどCGによるさらなる進化が期待されている。
「どちらの分野も、これからの未来において『高精度』『3次元』『AI融合』『教育』という4つがテーマとなるでしょう。私自身はもちろん、共同研究者や学生、さらに、こうした分野に関心を持ってくれる方々とともに、画像処理、CG分野の研究、教育にさらに励んでいきたいと思います」と松下先生。
画像処理やCGのさらなる進化を大いに期待したい。