高齢化が進み、要介護人口が増加している。一方で、介護職に就く人が、低賃金・重労働など様々な理由から介護業界を離れていき、人手不足が慢性化している。どうすれば介護業界の人手不足を改善できるのだろうか?
利用者満足度を高めるために、介護事業所にはサービスの質の向上が求められる。それには、提供する側である介護スタッフの職務満足度を高める必要がある。一部の介護事業所は、介護スタッフの専門性を高めるため、介護の資格をもつ者しかできない高度な業務を有資格者が担当し、資格を必要としない業務はそれ以外のスタッフが担当するという職務の専門化に取り組んでいる。
「職務を専門化することで介護職に対するプロ意識と誇りを芽生えさせ、心のこもったケアができる環境を整備したい」と池田幸代先生は考えている。
ひとことで介護業務といっても、その内容は複雑だ。利用者のケアはもちろん、介護記録・介護計画の書類作成など多岐に渡り、介護スタッフの中には、精神的・時間的な余裕がなく疲弊してしまう人が少なくない。このような状況をITやAI(人工知能)技術の導入によって解決しようと動き出している。
「例えば、タブレット端末による情報共有のリアルタイム化や自動の書類作成機能の活用などは大幅な時間短縮につながり、その分、利用者のケアに割く時間が多く持てるようになります。また、ITやAI技術の導入で、利用者の体調の変化を知らせるウエアラブル端末や徘徊を見守るためのセンサーなどさまざまなツールも開発されており、介護スタッフだけでなく、介護を受ける利用者にとっても大きなメリットがあるのです。」
介護現場でのさまざまな課題を解決する対策のひとつとして、介護現場へのロボット導入が進められている。実際、介護事業者に対して、ロボットを導入する際にかかる費用を補助する制度も始まっている。
2014年に行われた大和総研の調査によると、業務の改善要望が高い介護の種類として「認知症ケア」が挙げられ、具体的には、話し相手として時間がとられる、利用者の考えていることがわからない、徘徊への対応などが挙げられた。このようなケースもあり、認知症の利用者を相手にする「コミュニケーション・ロボット」も導入が進んでいる。そして心理療法的観点からロボットを活用し、利用者の心身の状態を改善していこうとする研究も行われている。
「アザラシの姿をした愛くるしいロボット「パロ」は、スウェーデンやデンマークで臨床実験が進んでいます。また、東京荒川にある施設ではPepperを導入し、利用者の話し相手や体操プログラムの主導的役割を担っており、東京情報大学でも研究チームが参加し、Pepperの導入がもたらす効果の測定やコミュニケーション・ロボット導入の仕方を検証する取り組みが行われています。」
今後、ますますロボットを活用した介護現場が増えると予想されるが、利用者・介護スタッフにとってより良く明るい社会づくりに貢献できる研究成果の報告が期待されている。