保健師は、人々の健康の維持、増進、そしてQOL(生活の質)の向上を目指す活動をする。行政、民間企業(産業保健)、学校、NPOなど保健師の活躍の場は多様だ。
「保健師の頭の中は常に情報で満ちあふれています」というのは時田礼子助教。行政の保健師を例にとると、自分が担当する地域の人口・健康などの数値データ、電車や道路などの交通状況、学校・保育所・医療機関などの社会資源など、たくさんの情報を収集する。そして住民の立場に立ち、24時間の生活を考えながら、それらの情報を活用できるよう形作っていく。
「例えば、ある一人暮らしの高齢者がいるとします。保健師は、その方が病気になったときにどこの病院にかかるのか、そこまでの道のり、先生の印象はもちろん、家事や買い物はどうしているのか、その店の品揃えまで考えます。これらの情報は、家庭訪問の行き帰りに自身で調査したり、健康イベントなどに参加してくれた高齢者との会話の中から情報を集めるなど、主な情報源はその地域に住む住民です」
こうして得た情報は、最初に集めたデータに住民から得た情報を加え、自身が担当する地区の状態を見極めたうえで健康課題を導き、課題を解決するための計画を立て、実践し、そこから得た情報を再度地区の情報に加え、次の課題を見極める。保健師はそれを常に繰り返しながら情報をアップデートしていく。
以前は、行政保健師として働いていた時田先生。今は“健康屋台®”というプロジェクトで地域住民の健康支援を行う。健康屋台®とは、健康に関わる仕事をしている人はもちろん、テクノロジーを活用して健康の課題に取り組んでいるプロフェッショナルなど多くの有志で集まってできたプロジェクトで、『ここへ来れば、元気が湧いてくる』という場所作りを目指している。「健康屋台®はデータやテクノロジーの活用も積極的に行い、未来に向けて進化し続けています」