Society5.0という言葉を聞いたことがあるだろうか。私たちの社会は長い時間をかけ、進化を続けてきた。Societyは社会の特徴を段階ごとに示しており、狩猟社会( S o c i e t y 1. 0 )、農耕社会(Society2.0)、工業社会(Society3.0)、情報社会(Society4.0)と進化し、次に目指すべき未来社会がSociety5.0だ。
大きな変化は、現実社会とサイバー空間の融合だ。「例えば、人工知能(AI)により、必要な情報が必要な時に提供されるようになり、さまざまな作業の効率化、自動化が行われ、私たちの生活がより一層便利になるといわれています」と話すのは看護学部の児玉悠希助教だ。
一見、看護には関係のないことに思えるが、その影響は看護の分野においても大きい。看護の役割である「健康を支える」という背景には、対象の生活への配慮が欠かせない。そのため、対象の生活様式が変化するということは、対象の生活と密接に関係する看護も変化する可能性があるということになる。「進化する私たちの社会とともに、新たな看護の未来を切り開いていく時期にあると考えています」と児玉先生は話す。
児玉先生の研究分野は看護情報学。近年はICT(情報通信技術)、IoT(モノのインターネット)の発展が目覚ましく、これからの社会ではそれらの技術を日常生活に取り込み、より便利で効率的な社会の実現に向けて進んでいく。そんな背景の中、医療・看護の分野においてもICTやIoTを活用したサービスの導入や、新たな仕組み作りが期待されている。
児玉先生は、看護師の働き方を効率化するための機器やシステム開発を行い、病院の看護師の業務分析に取り組んでいる。また、地域住民の健康を維持・促進するために、遠隔での健康教育・相談体系を構築していくことなども今後の取り組みとして検討している。「看護学」と「情報学」を融合した看護情報学は、国が推進する新たな未来社会(Society5.0)の仕組みと強く関係しており、今後の成長が期待される専門分野なのだ。
「看護学は、看護という実践の場面に基づいた学問であるため、実践の学問(科学)と言われています」と児玉先生。そしてその対象は人間であり、一人ひとり多様な生活背景がある。そうした対象を理解するためには、さまざまな学問への興味・関心が重要だ。よりよい看護を提供するためには、時には他分野の知識を必要とすることもある。「看護学」と「情報学」はもちろん、政治、宗教、経済など、私たちの生活と密接に関わりがある学問領域は多岐に渡る。
「特定の学問領域の学習のみにとらわれず、広い視野で周りを見渡し、興味・関心があることには積極的に取り組むこと。その経験が将来、看護を行ううえでの強みとなり、看護師としてのあなたの魅力につながります。」